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2026/02/01

PostgreSQL 18の新機能、仕様変更、不具合修正。開発者、運用管理管理者向け

 

1. PostgreSQL 18 基本情報

  • リリース日: 2025年 9月 25日

  • 主な焦点: 非同期I/Oサブシステムの導入によるI/O高速化、B-tree Skip Scan、UUIDv7のネイティブサポート、およびアップグレードプロセスの効率化。


2. 開発者向け:新機能と仕様変更

待望のインデックス・クエリ最適化

  • B-tree Skip Scan: 複合インデックス(例:col1, col2)において、先頭カラム(col1)を検索条件に含めなくても、後続のカラム(col2)のみで効率的にインデックスを利用できるようになりました。

  • UUIDv7 のネイティブサポート: uuidv7() 関数が導入されました。時系列順に並ぶ特性を持つため、B-treeインデックスの断片化を抑制し、書き込みパフォーマンスを向上させます。

  • 仮想生成列 (Virtual Generated Columns): 値をディスクに保存せず、クエリ実行時に計算する「仮想」列がサポートされ、デフォルトの挙動となりました。ストレージ容量を節約できます。

表現力の向上

  • RETURNING句の拡張: UPDATE 時に RETURNING old.col, new.col のように記述することで、変更前と変更後の値を同時に取得できるようになりました。監査ログの実装などが非常に容易になります。

  • SQL/JSON 構築関数の強化: JSONオブジェクトや配列の作成において、より柔軟な標準SQL準拠の構文が追加されました。


3. 運用管理担当者向け:新機能と仕様変更

アーキテクチャの進化

  • 非同期I/O (AIO) サブシステム: io_method 設定により、Linuxの io_uring やワーカープロセスを用いた非同期I/Oが利用可能です。特にクラウド環境などのネットワークストレージにおいて、読み取り性能が最大2〜3倍向上します。

  • パラレルCOPY: COPY FROM によるデータインポートが並列実行可能になり、大規模データのロード時間が大幅に短縮されました。

アップグレード・メンテナンスの改善

  • 統計情報の引き継ぎ: pg_upgrade 実行時にクエリプランナー用の統計情報が新しいクラスタへ引き継げるようになりました。アップグレード直後の ANALYZE 待ちによる性能劣化問題が解消されます。

  • パラレルGINインデックス作成: 全文検索などで多用されるGINインデックスの構築が並列化され、作成時間が劇的に短縮されました。

  • OAuth 2.0 認証: シングルサインオン(SSO)環境との統合を容易にする OAuth 2.0 認証がネイティブでサポートされました。


4. V18で修正された不具合

メジャーリリースおよび初期マイナーリリース(18.1)にて、以下の重要な修正が行われています。

  • ハッシュ結合のメモリ制御修正: ハッシュテーブルのサイズ選択ロジックに誤りがあり、必要以上のメモリを消費する、あるいは非効率な割り当てが発生していた問題が修正されました。

  • GINインデックスの無限ループ修正: 複数のスキャン条件(特に否定条件 ! term など)を組み合わせた際に、稀に無限ループに陥る不具合が解消されました。

  • PL/Pythonのメモリリーク: SQLエラー処理時にセッションメモリが解放されない不具合が修正されました。

  • 共有統計情報の破損防止: メモリ不足(OOM)エラー発生後に、統計情報を管理する共有テーブルが破損する可能性があった問題が修正されました。


5. 重要な仕様変更と互換性(注意点)

  • io_method のデフォルト: デフォルトは従来の挙動に近い設定ですが、io_uring を利用するにはカーネルの対応と設定が必要です。

  • パーティションテーブルの UNLOGGED 制限: パーティション親テーブルを UNLOGGED に設定する操作がエラーになるよう変更されました(パーティション個別に設定する必要があります)。

  • EXPLAIN のデフォルト変更: EXPLAIN ANALYZE を実行すると、BUFFERS(バッファ使用量)の情報が明示的に指定しなくてもデフォルトで表示されるようになりました。

  • 生成列のデフォルト変更: GENERATED ALWAYS 列がデフォルトで VIRTUAL(非保存)として扱われるため、従来の STORED(保存型)を期待するスキーマ定義は注意が必要です。


6. V17からV18へのアップグレード失敗談

最新バージョンへ移行した現場からの「落とし穴」事例です。

① 「非同期I/O設定によるリソース食い潰し」

  • 現象: 性能向上を狙って io_method = io_uring を有効にしたが、OS側の max_worker_processes やファイル記述子の制限を超えてしまい、データベースが起動しなくなった。

  • 教訓: AIOは強力ですが、OSレベルのチューニングとセットです。検証環境で I/O ワーカー数とOSリソースの整合性を必ず確認しましょう。

② 「統計情報引き継ぎの過信」

  • 現象: pg_upgrade で統計情報を引き継いだが、V18で導入された「Skip Scan」や「OR/IN 最適化」の影響で、一部のクエリプランが意図せず変わり、逆に遅くなった。

  • 教訓: 統計情報の引き継ぎは「アップグレード直後の最悪な状態」を避けるためのものです。新機能によるプラン変更を確認するため、本番稼働前には改めて主要クエリの実行計画を確認すべきです。

③ 「RETURNING句の既存コード競合」

  • 現象: アプリケーション側で oldnew という名前のカラムを使用していたため、V18の新しい RETURNING 構文のキーワードと衝突し、クエリがエラーになった。

  • 教訓: 予約語に近い列名を使用している場合、V18の構文拡張が影響しないか、事前の構文チェックが推奨されます。

PostgreSQL 17の新機能、仕様変更、不具合修正。開発者、運用管理管理者向け

 

1. PostgreSQL 17 基本情報

  • リリース日: 2024年 9月 26日

  • バージョン位置付け: メジャーアップデート

  • 主な焦点: バキュームのメモリ消費削減、増分バックアップの導入、JSON_TABLEの追加、論理レプリケーションのフェイルオーバー対応。


2. 開発者向け:新機能と仕様変更

SQL/JSON の大幅な拡張

  • JSON_TABLE の導入: JSONデータを一時的なリレーショナルテーブルとして扱えるようになりました。これにより、複雑なJSON構造を標準的なSQL(JOINなど)で容易に操作可能です。

  • SQL標準準拠のJSON関数: JSON_EXISTS()JSON_QUERY()JSON_VALUE() が追加され、JSONBデータの検証や抽出がより直感的になりました。

クエリ性能とCOPYコマンド

  • COPYコマンドの改善: COPY でデータを取り込む際、エラーが発生した行をスキップして続行できる ON_ERROR オプションが追加されました。また、エクスポートのパフォーマンスが最大2倍向上しています。

  • クエリプランナーの最適化: NOT NULL 制約がある列に対する IS NOT NULL チェックの省略や、CTE(共通テーブル式)のインライン化の改善により、複雑なクエリの実行速度が向上しました。

  • EXPLAIN の詳細化: EXPLAINMEMORYSERIALIZE オプションが追加され、クエリ実行時のメモリ使用量やデータ変換にかかった時間を確認できるようになりました。

インデックスとデータ型

  • 並列インデックス作成の拡大: BRINインデックスの並列作成がサポートされました。

  • 無限大のサポート: interval データ型で infinity(無限大)の値を扱えるようになりました。


3. 運用管理担当者向け:新機能と仕様変更

ストレージ管理とメンテナンス

  • バキューム(VACUUM)の革新: 内部データ構造に Adaptive Radix Tree を採用。これにより、デッドタプルの管理に使用するメモリ量が最大で20分の1に削減されました。メモリ制限(maintenance_work_mem)によるバキューム性能の低下が起きにくくなっています。

  • ネイティブ増分バックアップ: pg_combinebackup ツールが導入され、前回のバックアップからの差分のみを取得する「増分バックアップ」が標準機能として利用可能になりました。

論理レプリケーションの可用性向上

  • フェイルオーバーの同期: プライマリがダウンした際、スタンバイ側へレプリケーションスロットの状態を同期できるようになりました。これにより、フェイルオーバー後も論理レプリケーションをスムーズに継続できます。

監視とセキュリティ

  • pg_stat_checkpointer: チェックポイントの統計情報を確認するための新しいビューが追加されました。

  • pg_wait_events: セッションが何を待機しているかをリアルタイムで把握しやすくなりました。

  • 新しい管理ロール: pg_maintain ロールが追加され、スーパーユーザー権限を与えずに、特定のユーザーにバキュームやアナライズなどのメンテナンス権限を委譲できるようになりました。


4. V17で修正された不具合

メジャーリリースおよび初期のマイナーアップデート(17.1~17.2)で以下の重要な修正が行われています。

  • プランニング時のセキュリティ修正(CVE-2025-8713など): ビュー経由でテーブルにアクセスする際、プラン作成段階で統計情報が不適切に露出する可能性があった問題を修正。

  • JITコンパイル時のクラッシュ: 特定の複雑な数式や関数を含むクエリを実行した際に、JIT(実行時コンパイル)が原因でプロセスがクラッシュする稀なケースが解消されました。

  • 論理レプリケーションのメモリ管理: 大規模なサブスクリプション環境で発生していたメモリリークが修正されました。


5. 重要な仕様変更と互換性(注意点)

  • old_snapshot_threshold の廃止: 長い間非推奨だったこのパラメータが完全に削除されました。設定ファイルに残っているとエラーになります。

  • システムビューの列変更: * pg_stat_bgwriter から buffers_backend 関連の列が削除され、pg_stat_io へ移行されました。

    • pg_stat_statements の列名が一部変更(読み取り/書き込みのタイミング統計など)されています。

  • 暗黙的な変換の制限: interval 型のリテラル解析において ago の位置が末尾に限定されるなど、一部のパース規則が厳格化されました。

  • システムカタログの変更: pg_databasedaticulocaledatlocale にリネームされるなど、ICUロケールに関連する内部名称が整理されました。


6. V16からV17へのアップグレード失敗談

コミュニティや初期導入者から報告されている「痛い目」を見た事例です。

① 「ADMIN OPTION 権限に起因するアップグレード失敗」

  • 現象: pg_upgrade を実行すると、ロールの権限移行(GRANT)部分でエラーが発生し、アップグレードが中断される。

  • 原因: V16で導入された厳格な権限チェックが、V17への移行プロセス(特に WITH ADMIN OPTION を持つロール)で不整合を起こすケースがあります。

  • 対策: ソースとなるV16を最新のマイナーバージョン(16.10以降など)に更新してからアップグレードするか、問題となる権限を一時的に剥奪して移行後に再設定する必要があります。

② 「監視ツールのグラフが真っ白に」

  • 現象: 自作の監視ダッシュボードや一部の古い監視ツールで、データベースのメトリクスが取得できなくなった。

  • 原因: pg_stat_bgwriter から列が削除されたことや、pg_stat_statements の列名変更が原因です。

  • 対策: V17のビュー定義に合わせて、監視クエリを修正する必要があります。

③ 「pg_combinebackup の期待値ミス」

  • 現象: 増分バックアップを導入したが、リカバリテストを行った際に古いフルバックアップとの整合性が取れず、復旧に失敗した。

  • 原因: 増分バックアップの管理に必要な WAL summarizer を有効にしていなかった、あるいはバックアップチェーン(フル→増分1→増分2)の依存関係を正しく管理できていなかった。

  • 対策: summarize_wal = on の設定確認と、リカバリ手順の事前リハーサルが不可欠です。

PostgreSQL 16の新機能、仕様変更、不具合修正。開発者、運用管理管理者向け

 

1. PostgreSQL 16 基本情報

  • リリース日: 2023年 9月 14日

  • 主な焦点: パフォーマンスの最適化(並列クエリ、バルクロード)、論理レプリケーションの柔軟性向上、監視用統計情報の拡充。


2. 開発者向け:新機能と仕様変更

SQL構文とデータ型の拡張

  • SQL/JSON 構文の追加: 標準SQLに準拠した JSON_ARRAY()JSON_ARRAYAGG()JSON_OBJECT()JSON_OBJECTAGG() などのコンストラクタや、IS JSON 述語が導入されました。

  • 数値リテラルの改善: 可読性を高めるために、数値リテラル内にアンダースコアを使用できるようになりました(例: 1_500_000)。また、非10進数リテラル(0b:2進数、0o:8進数、0x:16進数)もサポートされました。

クエリ性能の向上

  • 並列処理の拡大: FULL および RIGHT 結合が並列実行可能になりました。また、DISTINCTORDER BY を伴う集計関数のプランが最適化されています。

  • 増分ソート(Incremental Sort)の活用: SELECT DISTINCT クエリで増分ソートが利用可能になり、処理速度が向上しました。

  • アンチジョイン(Anti-joins)の最適化: NOT INNOT EXISTS を含むクエリの実行効率が向上しました。

クライアントサイドの改善

  • libpq の負荷分散: クライアントライブラリ libpq で load_balance_hosts=random オプションが追加され、接続先ホストをランダムに選択できるようになりました。


3. 運用管理担当者向け:新機能と仕様変更

論理レプリケーションの強化

  • スタンバイからの論理デコーディング: プライマリサーバーだけでなく、スタンバイサーバーからも論理レプリケーションが可能になり、プライマリの負荷を軽減できます。

  • 双方向レプリケーションの基盤: origin=none パラメータが追加され、同一データの無限ループを防ぎつつ、2つのサーバー間で変更を同期しやすくなりました。

  • パラレル・アプライ: 大規模なトランザクションを並列で適用できるようになり、サブスクライバー側の遅延が解消されます。

セキュリティと権限管理

  • 特権の細分化: 以前はスーパーユーザー権限が必要だった操作(RESERVED_CONNECTIONS の設定や、特定の管理関数)を、定義済みロールを通じて一般ユーザーに委譲できるようになりました。

  • pg_hba.conf のモジュール化: include, include_dir, include_if_exists ディレクティブを使用して、設定ファイルを分割管理できるようになりました。

監視機能の拡充

  • pg_stat_io の導入: I/Oアクセスに関する詳細な統計情報を提供する新しいビューです。バックエンドの種類(クライアント、バックグラウンドワーカー等)やターゲット(テーブル、インデックス)ごとのI/O状況を可視化できます。

  • JITコンパイル統計: pg_stat_all_tables などで、JITに関連する統計情報が追加されました。


4. V16で修正された不具合

V16およびそのマイナーリリース(16.x)では、V15以前に存在した以下の脆弱性や不具合が修正されています。

  • CVE-2024-10976: 行レベルセキュリティ(RLS)が適用されたテーブルを参照するクエリ(CTEやサブクエリ経由)で、実行ロールに応じたプランの再作成が正しく行われず、本来隠されるべきデータが表示される不具合を修正。

  • CVE-2024-10977: libpqにおいて、SSL/GSS認証の交渉中に受信したエラーメッセージを破棄するように変更(中間者攻撃による偽メッセージ挿入の防止)。

  • バキュームの改善: 特定の条件下でバキュームがフルテーブルフリーズを不必要に繰り返す挙動が改善され、I/O負荷が軽減されました。

  • メモリリーク: 論理レプリケーションや特定のインデックス操作において報告されていたいくつかのメモリリークが解消されています。


5. 重要な仕様変更と互換性(注意点)

  • ICU サポートのデフォルト化: PostgreSQL 16はデフォルトで ICU (International Components for Unicode) を使用してビルドされます。OSのロケールに依存せず一貫したソート順を提供しますが、非ICU環境からの移行時は挙動の確認が必要です。

  • スーパーユーザー制限: セキュリティ強化のため、一部のデフォルト設定が厳格化されています。管理スクリプトでスーパーユーザーを前提としている場合、新しい定義済みロール(例: pg_use_reserved_connections)への移行を検討してください。

  • psql の \bind コマンド: プリペアドステートメントのようにパラメータをバインドして実行できるようになり、スクリプトの書き方に変更が出る場合があります。


6. V15からV16へのアップグレード失敗談

実際に移行を行った現場で報告されている、よくある「失敗」や「ハマりどころ」です。

① 「統計情報の消失によるパフォーマンス劣化」

  • 内容: pg_upgrade を実行した後、アプリケーションの特定のクエリが急激に遅くなった。

  • 原因: pg_upgrade はデータと定義を移行しますが、オプティマイザが使用する統計情報(Statistics)は移行しません。

  • 教訓: アップグレード直後に VACUUM ANALYZE(または analyze_new_cluster.sh)を即座に実行することが必須です。これを怠ると、インデックスがあるのにシーケンシャルスキャンが選択される事態に陥ります。

② 「拡張機能(Extension)の非互換」

  • 内容: 本体はアップグレードできたが、利用していた外部拡張(PostGISや特定の認証プラグイン)がV16に対応しておらず、サーバーが起動しない、あるいはエラーを吐き続ける。

  • 原因: バージョンアップ前に拡張機能の対応状況を確認し忘れたため。

  • 教訓: pg_upgrade --check でライブラリのロードチェックを確実に行うこと。

③ 「pg_hba.conf の手動上書きによる接続不可」

  • 内容: 旧バージョンの設定ファイルをそのままコピーしたところ、新しく導入された予約接続用パラメータと競合したり、新しい書式ルールに適合せず、一部のユーザーが接続できなくなった。

  • 教訓: 設定ファイルはそのままコピペせず、V16のデフォルトファイルをベースに、必要な差分だけを適用する運用が推奨されます。

PostgreSQL 15の新機能、仕様変更、不具合修正。開発者、運用管理管理者向け

 

1. PostgreSQL 15 基本情報

  • リリース日: 2022年10月13日

  • コンセプト: 開発者体験の向上、パフォーマンスの最適化、運用管理の効率化


2. 開発者向け:新機能と仕様変更

SQL標準への準拠と、アプリケーションロジックの簡素化に繋がる機能が多数追加されました。

主な新機能

  • MERGEコマンドのサポート: * 条件に応じて INSERTUPDATEDELETE を1つのSQL文で実行可能になりました。

  • 正規表現関数の拡充: * regexp_count()regexp_instr()regexp_like()regexp_substr() が追加され、他DB(Oracle等)からの移行や文字列操作が容易になりました。

  • 論理レプリケーションの改善: * 行フィルタリングと列リストの指定が可能になり、必要なデータのみをサブスクライバーに送信できるようになりました。

    • コンフリクト発生時に自動でサブスクリプションを停止する機能が追加されました。

  • JSONデータへの「多値インデックス」:

    • JSONB配列内の要素に対してインデックスを作成できるようになりました。

注意すべき仕様変更

  • public スキーマのデフォルト権限の変更:

    • 重要: データベース所有者以外、public スキーマにオブジェクトを作成する権限(CREATE権限)がデフォルトで剥奪されました。V14以前の挙動が必要な場合は明示的な GRANT が必要です。

  • ICU ロケールのサポート強化:

    • ICU(International Components for Unicode)をデータベース全体のデフォルトとして設定可能になりました。


3. 運用管理担当者向け:パフォーマンスと管理

大規模環境や高負荷環境での運用を効率化する改善が含まれています。

パフォーマンス改善

  • ソート性能の向上:

    • メモリ内およびディスク上のソートアルゴリズムが改良され、ソート処理が最大で 25%〜400% 高速化されました。

  • ウィンドウ関数の最適化:

    • row_number()rank()dense_rank() などの実行効率が向上しました。

運用・バックアップの変更

  • 排他的バックアップモード(Exclusive Backup)の削除:

    • V9.6で非推奨となった pg_start_backup() 等を使用する方式が完全に削除されました。pg_basebackup 等の非排他的バックアップへの移行が必須です。

  • WAL圧縮のデフォルト変更:

    • wal_compressionpg_lz からデフォルトで有効化されるようになりました。

  • ログ出力のJSON形式サポート:

    • log_destination = 'jsonlog' を設定することで、構造化ログを出力できるようになりました。


4. V15で修正・改善された不具合/制約

  • 統計情報の管理方式変更:

    • 統計情報を蓄積するプロセス(stats collector)が廃止され、統計データが 共有メモリ 上で管理されるようになりました。これにより、ディスクI/Oの負荷が軽減され、統計情報に関連する古い不具合や遅延が解消されました。

  • セキュリティ脆弱性の修正:

    • ビュー経由での統計情報漏洩(CVE-2017-7484の関連修正など)に対するチェックが、プランニングの初期段階で行われるよう強化されました。

  • メモリエラー時の安定性:

    • メモリ不足(OOM)が発生した際に、共有テーブルの統計情報が破損する可能性がある不具合が修正されました。


5. V14からV15へのアップグレード失敗談

実際に移行を行ったユーザーから報告されている、よくある落とし穴です。

① 「publicスキーマにテーブルが作れない!」

  • 事象: アップグレード後、アプリケーションが CREATE TABLE でエラーを吐くようになった。

  • 原因: 前述の通り、V15から public スキーマのデフォルト権限が厳格化されたため。

  • 教訓: 移行スクリプトに GRANT CREATE ON SCHEMA public TO [ロール名]; を含めるのを忘れないこと。

② 「外部ツールからの接続が切れた」

  • 事象: pg_upgrade 後、古いバージョンの pgAdmin や BIツールから接続できなくなった。

  • 原因: 認証方式やシステムカタログの内部構造が一部変更され、古いクライアントライブラリが対応していなかった。

  • 教訓: サーバーだけでなく、利用している管理ツールやドライバ(JDBC, psycopg2等)も最新版に更新しておく必要があります。

③ 「バックアップスクリプトが動かない」

  • 事象: 長年運用していたシェルスクリプトによるバックアップが失敗する。

  • 原因: 削除された「排他的バックアップ(pg_start_backup)」をまだ使っていた。

  • 教訓: V15に上げる前に、バックアップ手順を pg_basebackuppg_backup_start (非排他的) に書き換えておくことが必須です。

2026/01/31

PostgreSQL 14の新機能、仕様変更、不具合修正。開発者、運用管理管理者向け

 

1. PostgreSQL 14 基本情報

  • 正式リリース日: 2021年9月30日

  • 主なテーマ: 接続多数時のパフォーマンス改善、JSON操作の強化、監視機能の拡充


2. 開発者向けの新機能

開発効率を高めるSQL構文の拡張や、新しいデータ型操作が追加されました。

  • JSONBのサブスクリプト構文:

    • jsonb型に対して、配列のような data['key'] 形式でアクセス可能になりました(従来の data->'key' も利用可)。

  • マルチレンジ(Multirange)型:

    • 不連続な範囲を扱えるデータ型(例: int4multirange)が追加され、複雑なスケジュール管理などが容易になりました。

  • ストアドプロシージャのOUTパラメータ:

    • CALL 文で呼び出すプロシージャから複数の値を返せるようになりました。

  • バイナリコピーの高速化:

    • COPY コマンドで論理デコードのストリーミングがサポートされ、大規模なデータ転送が改善されました。


3. 運用管理担当者向けの新機能

パフォーマンス最適化と監視機能が大幅に強化されています。

パフォーマンスとスケーラビリティ

  • アクティブ/アイドル接続の並列処理改善:

    • 多数のクライアントが接続されている環境でのスナップショット計算のオーバーヘッドが削減され、スループットが向上しました。

  • B-treeインデックスの肥大化抑制:

    • 頻繁に更新されるテーブルのインデックスにおける重複エントリの処理が最適化されました。

  • GiSTインデックスのビルド高速化:

    • ソートを利用したインデックス作成が可能になり、構築時間が短縮されました。

監視・運用

  • クエリ識別子(Query ID)のコア導入:

    • pg_stat_statements を使用せずに標準でクエリにIDが付与されるようになり、ログと統計情報の紐付けが容易になりました。

  • 新しい定義済みロール:

    • pg_read_all_data(全データの読み取り権限)

    • pg_write_all_data(全データの書き込み権限)

  • VACUUMの最適化:

    • 緊急時にVACUUMをスキップさせない vacuum_failsafe_age 等の設定が追加され、トランザクションIDの周回問題への耐性が向上しました。


4. 重要な仕様変更と互換性(注意点)

アップグレード時に確認が必要な項目です。

  • パスワード暗号化のデフォルト変更:

    • password_encryptionmd5 から scram-sha-256 に変更されました。古いクライアントライブラリを使用している場合は接続に注意が必要です。

  • 幾何データ型の演算子削除:

    • 古い非推奨の包含演算子(@~)が削除されました。代わりに <@@> を使用してください。

  • 配列関数のシグネチャ変更:

    • array_append などの関数が anyarray ではなく anycompatiblearray を受け取るようになりました。これらを参照するユーザ定義オブジェクト(集約など)は再作成が必要になる場合があります。


5. 修正された主な不具合

V14のリリース後、マイナーバージョン(14.1〜14.x)で以下の重要な修正が行われています。

  • CREATE INDEX CONCURRENTLY の破損修正 (V14.4):

    • 特定の条件下でVACUUMと同時に実行するとインデックスが壊れる重大なバグが修正されました。

  • セキュリティ修正 (CVE-2022-1552):

    • VACUUMREINDEX などの実行中に、権限の低いユーザーがスーパーユーザー権限でコードを実行できる脆弱性が修正されました。

  • ltree型のGiSTインデックス破損修正 (V14.3):

    • contrib/ltree を使用している場合、アップグレード後にREINDEXが必要なケースがありました。